今日もきっと格好いい。そう思うと、香魚はセーラー服のリボンを整え、スカートの丈を気にし、さっきから何度も整えているのにまた執拗に髪を撫でつけてしまう。

 でもそれも仕方がない。早く早くと小声で急かす優紀に頷くと、香魚はいよいよ椅子から腰を浮かす。もう体が震えてしまって仕方がないけれど、渡すなら今しかない。


 ――さあ、行こう。


 香魚は自分に活を入れ、整然と並んだ机の島を渡って教室の入り口にたどり着く。

 戸の影からこっそり覗くと、けれど悠馬は最近よくグラウンドのほうを見ている男女五人グループに声をかけられ、足を止めていた。


 気さくに応じている様子を見ると、去年同じクラスだったのかもしれない。

 悠馬のクラスは覚えているけれど、そういえば彼らも悠馬と同じクラスだったかどうかは覚えていない。……なんだかすごく申し訳ない気分だ。


「……あ」


 しかし、そこでふと気づき、香魚は思わず声を漏らした。また申し訳ないのだけれど、彼らがいると、廊下では渡しにくい。

 どうしよう、場所を改めたほうがいいんじゃないかと困っていると、しかし彼らは、ひとりの女子に背中を押されて「またなー」とぞろぞろと教室の中へ消えていった。