優ちゃんが私のために残ってくれるのはすごく嬉しいし頼もしいけど、朝倉くんが泣いちゃうよ。もうちょっと大事にしてあげて。今日じゃなく明日ね。明日からね。


 そういうわけで、四者――いや、朝倉くんも含めて五者五様の放課後は、そろそろわりといい時間だ。

 壁時計の針が指すのは四時二十分。いつもなら剣道部の部活に向かう悠馬が香魚たちのクラスの前を通る時間である。


「あ、そろそろだね」


 壁時計を見た朱夏がそう言い、朱里と頷き合う。

 彼女たちも部活に向かう時間だ。しゅんと俯き、背中を丸めてひとりで帰っていく朝倉くんに続き、ふたりもその場に香魚と優紀だけを残して教室をあとにしていく。


 あまり人数が多くても、香魚にも悠馬にも変にプレッシャーがかかってしまう。むしろお守りを渡されるとも思っていないに違いない悠馬のほうが、無防備なぶん、教室の中でじっと戦況を見守る視線を感じたときのプレッシャーは言い表しようのないものだろう。


 そんな恐ろしい思いはさせられない。

 できるだけ香魚を緊張させないため、悠馬に変なプレッシャーを与えないための、彼女たちの温かな配慮というわけである。