困惑気味に受け取った彼女は、嬉しいような、でもやっぱり困惑する気持ちが先行しているような顔で「ありがとう」とだけ言い、くるりと背を向けた。

 香魚も同じように背を向け、家の方向に足を向けて歩きはじめる。


「……」


 歩きながら、考える。私はこれをどうするつもりなんだろう、どうしたいんだろうと、くるくる、くるくると。


 しかしいくら考えても明確な答えは出ず、いつの間にか家の前まで来てしまう。

 玄関を見つめて肩でひとつ息をつき、手芸店の袋ごと鞄の中に生地を押し込む。今日は唐揚げらしい夕飯のいい匂いに誘われるように、香魚は「ただいまー」と玄関を開けた。