そんな晄汰郎にゴリラ坊主のくせに全然男らしくないんだけど、と頬を膨らませつつ、でも、ということは最近の話では……ない? と詩は思わず考え込んでしまった。


 そうしていると「宮野もちゃんと完歩できたら、そんときは仕方がないから教えてやるよ」と晄汰郎が言う。

 それならば詩のほうも夜行遠足に向けてのモチベーションがぐんと上がる。


「わかった」

「おう」


 晄汰郎の顔は、前にも増して赤かった。けれど、詩の顔も晄汰郎のそれと同じようになっていることを、彼女はまだ知らない。

 そんなふたりの間を、さっきまでとは違う爽やかな秋風が穏やかに吹き抜けていった。そういえば、夜行遠足当日の天気も、今日みたいに気持ちのいい秋晴れになるらしい。



 詩が自分の顔が真っ赤だということを知ったのは、それから少しあとのことだった。

 心配して教室で待ってくれていた友人たちに、「顔が真っ赤だけど、どうしたの? ちょっと泣いたっぽくない?」と指摘されてから。


 詩は真っ赤な顔で笑う。

「お守り、ちゃんと受け取ってもらえた!」