手芸店の袋は、生地しか入っていないので質量的にはもちろん軽かった。持っている感覚だって、ほとんどないに等しい。

 それでも、確かな重みがある。男女の思惑《おもわく》が入り乱れているのだから、当然だ。


 優ちゃんはどうするつもりなんだろう。


 夕飯の買い物客でそれなりに賑わってはいるものの、やはり地方の田舎らしく少々寂れた感のある商店街を並んで歩きながら、そろりと優紀の横顔をうかがう。

 しかしそこからは、ほとんどなにもと言っていいほど感情らしいものが読み取れなくて、香魚は仕方なくそのまま前方に視線を移した。


 私はどうするつもりなんだろう。

 歩くたびにカサカサと鳴るビニール袋の音を聞きながら、ふと香魚は思う。


 今年も生地だけは買ってしまった。去年作ったものは、机の引き出しに大事にしまってある。すでに諦めているわりには、お守りを目にするたびに、どうして渡せなかったんだろうといつも後悔する。それと同じくらい、渡したい気持ちも常に持ち合わせている。


 みんな、どうするんだろうなあ……。


 商店街を抜けて、優紀との分かれ道。

 いつものようにバイバイと手を振り合ったあと、ふと思い出して呼び止め、セット販売になっている生地の半分を優紀に渡す。