それに、お守りがきっかけで話すようになったけれど、晄汰郎は別に詩の理想どおりの男子ではなかった。

 むしろ嫌いなタイプかもしれない。女の子を上手くリードしてくれるような人でもないし、気を使ってくれるような人でもない。俺はこうだからお前が付いてこいよ、みたいなところが、同級生のくせにと思うと腹が立つし釈然としない。


 それだけ理想とかけ離れているのに、それでも好きになってしまった詩は、この先、いったいどうすればいいのだろうか。

 ゴリラ坊主だなんて思うわけがない。むしろどんな格好でも様になって格好よすぎるから、いつも自分のほうばかりが振り回されているようで、単に(ひが)んでいるだけである。


「……そういうところも腹が立つんだって」


 リアルな男子は――こと晄汰郎に関してはまったく自分の手に負えない。今まで磨いてきた女子力も計算もちっとも通用しないし、挙げ句の果ては嫌われてしまう始末だ。


「ああ、もう……」

 詩はそれからもしばらく、計算ずくでは渡せなくなってしまった本命お守りを握りしめたまま、体育館裏で途方に暮れたのだった。