気づいてしまった本心。膨張する恋心。だが、計算が嫌いな晄汰郎にはとうてい伝えられるはずもなく、胸の奥に厳重に鍵をかけて閉じ込めざるを得ない本音。

 ぽたぽたととめどなく落ち続けるそれは、それらの結晶だ。


「はああ、もう~……」

 ただ晄汰郎を彼氏にしたいと思っただけなのに、どうしてこんなに、こじれてしまったんだろう。

 できるだけ小さく体を丸め、詩はずずずと鼻をすする。もうメイクもめちゃくちゃだ。こんな姿、誰にも見せられない。


「……でも、好きなんだもん」

 好きだから、頭の中の電卓を捨ててストレートにぶつかっていけないのだ。計算を取ったら、詩にはなにも残らない。計算なしではもう自分が取るべき行動さえわからない。

 完全に八方塞がりで、手詰まりで。


 ――でも。


「それでも好きなんだもん……」


 それが詩の心からの本音だった。

 こんなところでしか本心を言えない自分が悔しくて、情けなくて、詩は何度も自分の太ももを叩いた。でも、ただ痛いだけで、気も晴れないし、涙も一向に引いてはくれない。