「朱夏、お願いっ!」

「任せなさいっ!」


 直後、全身のバネと渾身の力をすべて注いで振り下ろした右の手のひらに痛みが走る。

 でも、ばちぃぃん、とボールの芯を捉えて打ったスパイクは、ここ最近では久しぶりに気持ちがいいもので、ひとつ、なにかが吹っ切れたような、そんな手応えもあった。


「ナイス、朱夏!」

「朱里こそ、いいトスありがと!」


 そう言い合いながら、ぱちん、と軽快にハイタッチを交わして笑顔を向ける。

 うん、これでいい。今はこれがいい。


「よーし、今日はじゃんじゃん私にトス集めて! 声出していくよーっ!」


 朱夏の笑顔は、予報によると夜行遠足当日も気持ちのいい秋晴れが期待できるだろうという空のように、少しの憂いを帯びてはいたものの、確かに晴れやかなものだった。