せっかく格好いいって言ってくれたのに、全然格好いいところを見せられなくて、ごめん。

 せめて香魚ちゃんは後悔のないように頑張って。デカいくせに腰抜けな私が応援したところで、なににもならないかもしれないけど。……でも、私のぶんまで、どうか。


 なぜかこみ上げてくる涙を薄っすらと掻きはじめた汗のせいにして、朱夏はアップをしながら指で何度も目元を拭った。


「朱夏、もしかしてコンタクトがずれちゃったんじゃない? ……大丈夫?」

「あ、うん。平気。ごめん、ありがと」


 真面目でとんちんかんで可愛い朱里に目元を心配されつつ、三十周走ったところで、ようやくアップが終わった。

 朱里はコンタクトだけど、朱夏は裸眼だ。自分がコンタクトだからって朱夏が裸眼なことをすっかり忘れている朱里のボケっぷりに救われつつ、その頃には本当に汗の粒がいくつも額から垂れてきていた朱夏は、タオルで豪快に顔を拭く。


 大丈夫、まだ大丈夫だ。来年の今頃まで湊のことが好きなままだったら、そのときは腹を括って朱里にも香魚ちゃんにも優紀ちゃんにも全部を打ち明けよう。

 香魚ちゃんは四年片想いして、ようやく心を決めたんだ。私なんて、まだたったの四ヵ月だもの。