もうとっくに姿が見えなくなってしまった湊を想いながら、教卓の前に移動し、そこに頬杖をつく。

 このクラスは三十二人だ。数えてみるとノートは三十一冊。朱里のほかにもまだ提出していない人がいると思っていたけれど、どうやら彼女で最後のようだ。


「ほんっと、なにしてるんだろうなぁ……」


 まだ戻らない朱里と自分に向けて、朱夏はぽつりと独白をこぼした。

 帰宅部の生徒はまだ若干名残っているものの、部活組はもうみんなそれぞれの部活へ行ってしまっている。日誌を書いていたもうひとりのクラスメイトも、早々に書き上げ、その姿はない。


「ごめん! 用務員のおじさんに捕まって、面倒くさい掃除させられちゃってて。ほかの人たちはいつの間にかいなくなっちゃってるし、ほんっとツイてないよー」


 やや経って、ようやく朱里が教室に駆け込んできたときには、その帰宅部のクラスメイトたちも、もう教室をあとにしていた。案の定、鞄のほうに入っていたノートを急いで朱里に出してもらい、ふたりで半分こして生物準備室へと運んでいく。