けして本気じゃないわけではない。ただ、自分たちのレベルを知っているだけだ。

 朱夏が自分には恋は似合わないと思っているように、女バレの中にも、みんな口には出さないまでも、そんな空気が点在している。


「マジで? じゃあとりあえず、机の中を見てもノートがなかったら、悪いけど大垣に頼むことにするわ。俺、こう見えて副部長だから、実はあんまり遅れられないんだわ」

「うん」


 そうして探すも、しかし残念ながら朱里の机に目星のノートは入っておらず、「恩に着るわ」と言ってさっそく部活に向かっていった湊のひょろ白い後ろ姿に手を振りながら、知ってるよ、と朱夏は心の中で言う。


 知ってるよ。もう二年も一緒の空間で部活をしているんだから、三年が引退して副部長になったことも、それ以来、前にも増して頑張っていることも、すごく張り切って練習を仕切っていることも、全部知ってる。


 恩に着るって言うなら、私を好きになってよ。湊より一センチ背が高くて、スカートが壊滅的に似合わなくて、がさつで普通にデカい私を。でも、ショートカットだけは自分でもけっこう自信があるんだよ。……湊は、髪の短い子はタイプじゃないですか?