すぐに話題が移ったことにほっとしつつ、とりわけ長く興味を持たれなかったことに残念な気持ちにもなりつつ、朱夏は困ったように鼻から息を吐き出す湊に言葉を返す。

 踏み込んで聞かれたら、どう答えたらいいかもわからないくせに、少しの変化にも気づいてもらえていたことが嬉しいなんて。

 朱夏はますます、湊に顔を向けられない。


「だよなー。あー、マジでどうすっかなー」

「あ、じゃあ、私が代わりに提出しておこうか? 湊、部活大好きだもんね。私ならもうちょっと待てるし、ちゃんと理由を話せば、少しくらい遅れても別に大丈夫だし」


 そのタイミングで顔を向ける。

 まだ一緒にいたいが、もうどっか行ってほしい。そんな気持ちで湊に提案する。それに、本音を言えば、ちょっとだけ部活に行きたくないし。


 特に昨日のことを引きずっているわけではないけれど、なんとなく気が進まないのは本当だ。朱里をダシに使うようで罪悪感も覚えるものの、ちょっとくらい遅れたところで別に大丈夫なのも本当だから仕方がない。


 キャプテンの子だって、特別厳しいわけでもなければ、スパルタでもない。まずは公式戦で一勝を目標に掲げているだけあって、そこらへんはわりと融通か効くのである。