湊の悪いところは、こんなふうにやたらと距離が近いところと、必死になって隠していることを普通に見抜いて実際に口に出すところだ。

朱里と一緒に話すときと朱夏単独で話すときとの違いなんて、朱里さえ気づいていないのに、どうして知られたくないことに限って湊には気づかれてしまうのだろう。

 耳まで熱くなって、もう振り向けない。


「ふーん。まあ、いいや。それより、どうしよ。もう勝手に机の中とか鞄の中とか、漁って持っていってもいいと思う?」


 相当焦れているのか、直後、湊が困ったように後頭部をやや乱暴に掻きながら、空いている手で朱里の机を指さした。

 彼女の机は掃除のためにあらかじめ綺麗に片づけられていたけれど、おそらく中身はまだ鞄に移していないと思われる。軽そうな鞄が、なかなか戻らない主人を行儀良く待つペットのようで、なんだか忠犬に見えてこなくもない。


「……いや、どうだろう。私にもそこまでは判断つかないよ。机の中ならともかく、鞄の中までは、さすがに漁れないし」


 そういえばもうすぐ生理だと言っていた。ポーチを見ても湊は気づかないかもしれないけれど、たとえ気づかれなくても、なんだか嫌だ。朱里も絶対、そう思うだろう。