ふいに核心を突くようなことを言われると、どうしてとっさに逆のことを言ってしまうのだろうか。自分でも若干引くほど全力で否定してしまい、朱里のことも肩が跳ねるほど驚かせてしまった。

 その横では、のほほんと会話をしていた香魚と優紀の動きも完全に止まっていた。驚いた顔で、何事だろうと目を丸くしている。


「ごめん、ごめん。朱里が私に、好きな人いるの? なんて聞くもんだから、びっくりしちゃって。私にはそういうのは似合わないのにねー。声大きかったよね、ごめんね」


 はははと笑ってふたりに謝りながら、朱夏はまた、小さな嘘を積み重ねていく。

 香魚ちゃんが劇的に変われても、私までそうなれる保証はどこにもない。だったら、全部を隠して、このまま私は私のキャラを続けていくしかないんじゃないのかな……。


 ふとネット向こうの男子のほうを見ると、相変わらずいつ見ても白くてひょろい湊が素人相手に本気のスマッシュを打ち込み、しかし当たりどころがよかったらしく普通に打ち返され、なおかつ得点までされていた。


「あはははっ、けっこう上手いじゃん! もうバド部入っちゃえばいいのに」