引っ込み思案で、消極的で、いつも受け身な香魚から初めて発せられたその強い思いは、朱夏にとってとても衝撃だった。

 四年も想い続けているからこそ無理――つい三日前まではそうだった香魚に、この短期間の間でいったいなにがあったのだろう。


 けれど裏を返せば、香魚には今までの考え方を百八十度変えさせるだけの〝なにか〟があったのだ。朱夏にはない〝なにか〟が。

 羨ましかった。すごいなと思った。受け身なのは自分のほうだった。香魚は朱夏のこともキラキラしていると言ったが、朱夏には香魚のほうこそ、キラキラと眩しく見えた。


「あ、もしかして、昨日のこと、まだ気にしちゃってる? あれは私の采配が悪かったんだって。ちょっと調子を落としはじめてるのがわかってたのに、朱夏に頼りすぎて、いつもどおりにトスを上げちゃったんだから」


 けれど朱里はそう言い、真面目に心配しだした。昨日のこととは、例のトスを何度もふかしてキャプテンにキレられたことだ。

 あれはしっかり集中できなかった私のせいで、朱里は責任を感じることなんてひとつもないのに。

 そう思うとますますバツが悪くなって、笑顔がぎこちなくなっていく。