朱夏は半ば、バド部の部活に勤しんでいる湊のところへドスドスと乗り込み、思いっきり文句をぶちまけてやりたい気分だった。


 部活中の体育館も、バレー部とバド部で体育館を二分割して使っているので、湊のところまでは歩いてすぐだ。

 こちらの気なんてなにも知らず、ぱーん、ぱーんとシャトルを飛ばしている湊の呑気な横顔が、あのときばかりはさすがに憎たらしくて仕方がなかった。


 それから、デカいだけでまるで意気地なしな自分のことも、それ以上に憎たらしかった。そしてその気持ちは、今も続いている。香魚が頑張っていることを知った今も。


「……」


 今のところ、誰かに本命お守りをもらったという噂も、優紀にご執心の朝倉のように、自分から欲しいと打診している相手がいるという話も聞かない。

 けれど、本命お守りをもらうほうは、もしかしたら今日明日で誰かから渡されることもあるかもしれない。


 湊がモテるという話も、そういえば朱夏の周りでは聞いたことはない。が、密かに思いを寄せている子がいないとも限らないのだ。

 むしろ、そういう子なら、明日の放課後が確率的に一番高いんじゃないだろうか。