高校進学と同時に家を新築し、引っ越しをしたくるりにとっては、たとえ数駅分の移動距離でも感覚的にはずいぶん遠い。


 厳しい練習。バスケにはじまり、バスケに終わった中学時代。楽しかったけれど、心にはいつも、ちょっとだけの不満があった。

 そういうものを全部ひっくるめても、やっぱり最高に充実して楽しい三年間だったなと思うと、どうしても泣けてきてしまうのだ。


 ――このままじゃダメだ。探して、見つけて、もう一度ちゃんと手にしよう。


 電車が止まり、ホームへ降りると、くるりは盛大に鼻をすすりながら改札を抜けた。周りの客や駅員に多少驚かれもしつつ、すっかり日が落ちて暗くなった外へ足を向ける。

 行き先はもちろん、中学校だ。

 スマホで時刻を確認すると、今の時間ならギリギリ練習の最後に間に合いそうだった。


「顧問の先生が変わってないといいけど」

 くるりが三年だったときの一年生は、今は三年だ。風の便りで聞いたところによると、今年の中総体はいいところまで勝ち進んだものの、結局負けてしまったそうだ。