もしもらえたら、なにがなんでも完歩するだろう。彼女の手作りのアップルパイを一緒に食べるために。

 まさに青春だ。


 頑張れ男子、と心の中でエールを送りながら、くるりは初々しさ全開のふたりの横を少し離れたところからすれ違った。

 商店街の右端と左端。ちょうど八百屋と花屋が向かい合って建っているところの真ん前だった。


 夕方の買い物客でそれなりに人出があったので、彼らがくるりに気づいたかどうかは、わからない。でも、くるりは、ばっちり気づいてしまったのだから、もう仕方がない。エールを送らずにはいられなくなる。


 前なら、聞こえないところまで離れたところで、統吾たちと冷やかして笑っていたかもしれない。けれど、今は違う。

 女子のほうも頑張れ、と片割れの子のほうにもエールを送り、そうしてくるりは駅舎に入り、ちょうどホームに到着した二両編成のローカル電車に乗り込んだのだった。


 *


 オレンジから藍、藍から黒へと刻々と暮れなずむ町並みを車窓からぼんやりと眺めながら、くるりは、バスケにはじまりバスケに終わった中学の三年間を思い出していた。