一方の片割れの子のほうも、見ているこっちとしては、まんざらでもなさそうな様子に映る。照れているのか、何度も適当にあしらってはいたものの、しきりに自分の鞄を気にかけていたのが、なによりの証拠に思えた。


 もしかして、これでさっきの彼女は嬉しそうに笑っていたんじゃない? もしかしたら、鞄の中には本命お守りが入っていたりして。


 邪推な真似だとは重々承知ながら、渡すタイミングをうかがっているんだろうかと思うと、学校の廊下ですれ違った彼女のように、くるりの頬も自然に緩む。


「いいなぁ。羨ましい……」

 そしてそれが、とても羨ましかった。実際に声に出してしまうくらい、とても。


 男子も女子も夜行遠足に命がけ。それは、くるりたちのグループにはないものだ。

 去年は参加するだけで精いっぱいだったけれど、二回目の今年は勝手もわかっているだけに、いろいろとアクションを起こしやすいのだろう。


 本命お守りに一喜一憂するのは、なにも女子だけとは限らない。この彼のように、意中の女子からお守りをもらいたく頑張る男子だって、たくさんいるのである。