どうやら優紀は、さっきまで朝から本命お守りの打診を受けていたらしい。
香魚たち二年生には、告白するなら十一月の修学旅行という手もある。しかし夜行遠足は、それをもいとも簡単に凌駕してしまう、いわば蓮高最大の胸キュン行事だ。
「香魚、声大きいって!」
そう言って口の前でしきりに人差し指を立てる優紀に「……ご、ごめん」と謝りつつも、香魚の頬はみるみるうちに緩んでいく。
――そうだそうだ、夜行遠足には、こういうパターンもあったんだった!
香魚はお守りを作ることだけしか考えていなかったので、ほとんど忘れかけていたが、夜行遠足の時期が近づけば、こうした探り合いも水面下で行われるようになる。
バレンタインに当てはめると、逆チョコといったところだろうか。
意中の女の子から本命お守りをもらうことも、男子の中で完歩に向けての大きな原動力になっているのだ。
「で、どうするの!? 作るの!?」
潜めた声のまま、テンション高く優紀に尋ねる。
男子から密かな人気を集めていることは知っていたが、こうして直接、優紀本人に打診してくる相手は、香魚の知る限りでは朝倉くんが初めてだ。中学からの親友である優紀に恋が芽生えるかもしれない。その嬉しさは何物にも代えがたく、胸キュンである。
香魚たち二年生には、告白するなら十一月の修学旅行という手もある。しかし夜行遠足は、それをもいとも簡単に凌駕してしまう、いわば蓮高最大の胸キュン行事だ。
「香魚、声大きいって!」
そう言って口の前でしきりに人差し指を立てる優紀に「……ご、ごめん」と謝りつつも、香魚の頬はみるみるうちに緩んでいく。
――そうだそうだ、夜行遠足には、こういうパターンもあったんだった!
香魚はお守りを作ることだけしか考えていなかったので、ほとんど忘れかけていたが、夜行遠足の時期が近づけば、こうした探り合いも水面下で行われるようになる。
バレンタインに当てはめると、逆チョコといったところだろうか。
意中の女の子から本命お守りをもらうことも、男子の中で完歩に向けての大きな原動力になっているのだ。
「で、どうするの!? 作るの!?」
潜めた声のまま、テンション高く優紀に尋ねる。
男子から密かな人気を集めていることは知っていたが、こうして直接、優紀本人に打診してくる相手は、香魚の知る限りでは朝倉くんが初めてだ。中学からの親友である優紀に恋が芽生えるかもしれない。その嬉しさは何物にも代えがたく、胸キュンである。