だから、どこでリタイヤするのが妥当なのか、ちょうどいい距離を探してるんだよ。

 すると杏奈はそう言い、ちぅ、と手に持っていたメロンソーダを吸った。ある意味毒々しい緑色の液体がストローの中を駆け上り、可愛らしくすぼまった口に入っていく。


「あー、やっぱ、六割くらいかな?」


 それを眺めながら、くるりは適当に答えてみる。

 明らかに具合が悪そうであれば、距離に関係なく、すぐに救護されるが、そういうときに限って人って案外元気なものだ。


 くるりの場合は違ったものの、どうやら杏奈たちは、今年も仮病を使っていい感じに夜行遠足から離脱する気が満々らしい。

 ……呆れるというか、らしい、というか。なんでこういうところだけ全力なんだか。


「だよねー。じゃあ、ちゃっちゃと歩いて、さっさとリタイヤしちゃおうよ。頑張って歩きすぎて具合が悪くなった、とか言えば大丈夫だって。もっともらしいじゃん」

「……まあ、そういう場合もあるね」

「ね!」


 名案だ、と言うように、杏奈がぱちんと両手を合わせて目を輝かせる。

 もう本当に、なんでこんなところだけ全力なの、この子は。