でもあれ、別に私たちに向けて笑ったものじゃないと思うんだけど。てか、同情したり憐れんだりもしていなくて、ただ単にその子にとって嬉しいことがあって、たまたま私たちの後ろを通りかかったときに思わず頬が緩んじゃっただけだと思うんだけど。


 炭酸が抜けて生ぬるくなったコーラとともに、その台詞を喉の奥に押し流す。

 話が長引くようなら、聞いているこっちもあまり気持ちのいいものでもないので、ただの悪口になる前に止めに入ろうかと思っていたけれど、出る幕がなくてよかった。


 顔くらいは知っているものの、話したことのない隣の隣のクラスの子。

 その子を庇ったせいで杏奈から顰蹙(ひんしゅく)を買いたくはない。


「で、くるりはどうなの?」

「うぇっ?」


 急に話を振られて、盛大にまごつく。

 どうなのかと聞かれても、なにを求められているのかわからず、くるりは尋ねてきた杏奈を見た。いったいなんの話だろう?


「もー……。どのあたりでリタイヤするかって話だってば。あんまり初めのほうでもダメだし、半分を過ぎてからだと、あと何キロだから頑張って歩けって言われるだろうし」