自分の顔面レベルは、とっくにわきまえている。だから、たとえ最高傑作の本命お守りが作れたとしても、それは渡さないし、ましてや告白なんてするわけがない。


 こういう恋だってあるんだ、無理に勇気をかき集めることもないじゃないか。

 優紀には散々、辛口批評をされたし、朱夏には励まされたけれど、香魚の心は、自分の顔面レベルを他人に諭されたあのときから、ずっと凍りついたままなのである。



「さて、ひとりで出てきたはいいものの、これからどうしよっかなぁ……」


 下駄箱で靴を履き替え、昇降口を出ると、香魚は周りに誰もいないことを十分に確認してから、やっとひとりごちた。そうやってでも声に出さずにはいられなかったけれど、ひとり言を聞かれるのは、普通に恥ずかしい。


 だってそこには、今週いっぱいは優紀と帰れないことへの寂しさと、もしふたりが付き合いはじめたら私は蚊帳の外だなという、もうひとつの寂しさが含まれている。

 もしかしなくても、優紀が朝倉くんに取られてしまうかもしれない寂しさのほうが断然大きい。


 もしそうなったら心から祝福するし、精いっぱい気を利かせる。でも、たまにでいいから、優紀を返してほしい。それが本音だ。