せめて優ちゃんは渡しなよね。欲しいって言ってくれてる男の子がいるんだから。


 手に持っていたスマホで時刻を見て、昨日朝倉くんからの打診が終わって優紀が戻ってきた時間よりも、もう十五分も過ぎていることを確認すると、香魚は登録しているケータイ小説サイトを開き、好きな作家の更新の有無を確かめた。

 幸い栞を挟んでいる作家の作品のほとんどに更新を知らせるマークがついていたので、時間潰しに読みはじめる。悠馬の姿も見えなくなってしまったので、やることといえば、これくらいしかない。


「なんで小説の中に出てくる女の子たちは、みんな当たり前に可愛いかなぁ……」


 文字を目で追いながら、たまらず呟く。

 ほんとずるい。羨ましい。世の中はたいてい普通の人が九割を占めているのに、主人公や相手男子や、その周りだけ美男美女って、どれだけご都合主義なんだろう。……それでも好きだから、読んでいるんだけど。


 とはいえ、香魚も別にブスではない。その自覚は香魚自身もしている。

 でも、ただブスではないというだけのことだ。可愛いとか綺麗とか、性格が明るいとか誰とでも分け隔てなく接せられる気立てのいい子とか、そういうオプションは香魚には付いていないし、これからも身につく気がしていない。