「何で急いでんの?別に一緒に帰るわけじゃないのに」

隣でせかせかと筆箱やら水筒やらを鞄に入れていた私に、沢崎くんは冷静に言い放った。

うん、言われてみれば確かにそうだ。
追うように帰り支度をする必要は無かった。


「私も急いでるだけだから」

「あっそ。じゃ、お疲れ国枝さん」


誤魔化すように出た言い訳も心なしか笑われたような気がしたけれど、先に視聴覚室を出たのは沢崎くんだった。


人懐っこい割に、一定の距離を取ろうとする感じ。
なんか調子狂う。
そう思うのは多分、自分と似てるからなんだろう。

人懐っこいという部分は残念ながら私は持ちあわせていないけれど。


私は、ふぅ…とため息を吐いて視聴覚室を後にした。