10年後、思い出したくなる物語





体育祭当日は、快晴の青空だ。





「ハチマキ似合わねー」



体育祭実行委員のテントでプログラムを必死に確認していた私の頭に手を置いたのは沢崎くん。



私のとは違う、青色のハチマキを首にぶら下げている。

きっちり頭に付けている私とは正反対だ。



「ハチマキに、似合うとか無いとおもう」

私はしわくちゃになったプログラムに再び視線を落とした。







「真面目か。つーか、何で今日髪結んでんの?」

隣に座った沢崎くんは、私の小さなポニーテールを右手で軽く弾いた。


「実行委員は動き回るし、汗かくから」

本当はそんな理由じゃないけれど。



「ふーん…ん?ちょっと待て」


私はギクリと肩を上げた。


「あ…そろそろ来賓のお迎えに」


逃げるように立ち上がると、ハチマキを引っ張られ後ろに引き戻される。

私の背中を受け止めた沢崎くんは、くるっと私を反転させた。




「…何か、化粧してる?」


少しだけ。まつ毛を上げて、色付きのリップにした。

バレないかなと思ったのに。



「なんで分かるの…」


「そりゃ分かるよ。なんで気合い入れてんの?」



体育祭なんて全然楽しみじゃなかった。

思い出作りしてはしゃいでるクラスメイトを、どこか冷めた目で見てたけれど、今はその気持ちが何となく分かる。


「誰かと一緒の、思い出になる体育祭なら、ちゃんと楽しんだ方がいいかもって思って」



私がそう言うと、沢崎くんはふっと笑った。


「誰かって、俺?」


私は少し微笑んで続けた。



「実行委員になって、沢崎くんに出会えて本当によかったなーって思う。ありがとう」



「…どういたしまして。
…って、なにこれ。恥ず」