10年後、思い出したくなる物語



「でも、末次さんと一緒に帰ってくの見たときに、何かイラついて。
引き止めたくなって、気付いた。









俺、国枝さんの事、好きなのかなって」






そこまで言うと、ようやく顔を上げた沢崎くん。

ボサボサの髪とは裏腹に、真剣な表情だ。




「今日、聞くつもり無かったし、言うつもりも無かったんだけど」


「…うん」


「末次さんと、付き合ってる?」


左右にブンブンと首を振ると、ふうっと溜め息をついた沢崎くん。


床に軽くついていた手を引っ張られてバランスを崩した私は、へにゃりと床に座り込む形になった。


視線を上げると目の前には沢崎くんがいる。




「じゃあ俺が入り込む余地、ある?」


「……ある、」


みるみる熱くなる私の顔。

沢崎くんの瞳に、そんな私が映っているのが分かる。


「だからそれ、感染るんだって」


そう言う沢崎くんの耳がまたほんのり赤い。


沢崎くんの左手が、私の頬に触れた。



「嫌じゃないなら、目閉じて」

沢崎くんの言葉に、私は何の抵抗もなく目を閉じた。


「…何で今日そんな素直なの?マジで調子狂う」


そう言った沢崎くんは、しゃがんだままもう一歩私に近付いて、触れるだけのキスをした。