10年後、思い出したくなる物語





「相談するような事はないんです」

私は持ってきたチーズケーキをパクっと口に入れた。


「ただ、自分でもよく分からないっていうか…知らない感情がどんどん出てきて、処理しきれないっていうか…」


何を言いたいのか、私自身もよく分からないけれど、末次先輩は黙って聞いてくれた。





「国枝さんは頭で色々考えすぎだね」


苺のタルトを食べ終えた末次先輩が、コーヒーを一口飲んでそう言った。


「たまにはさ、感情の赴くままに行動するのも悪くないよ」

「感情の赴くまま?」

「そう。ブレーキかけずに、曝け出す」



私に出来るだろうか。


誰かを理解しようとすることも、自分を理解してもらうことからも


ずっと逃げてきたのに。


「高校2年生ってさ、そういうフェーズなんだよ。僕もそうだった。

いろんな価値観とか、考え方とか、それこそ人間関係?

そいうのが自分の中で定まってくるっていうか。

だからこそ、そういう時に出会った人とか、一緒に過ごした仲間ってすごく尊く感じるんだ。

僕は高3だけど、大人になったらもっと実感するんだと思う」


末次さんは、喋り終わるとまた一口コーヒーを口に運んだ。