「こ、こんにちは」
「どうかした?」
「いや…」
言葉に詰まった私の様子を見て、末次先輩は「国枝さん、暇?」とニッコリ微笑んだ。
「えっと、はい。暇…だと思います」
「じゃあさ、僕にちょっと付き合ってくんない?」
「え?」
「さ、靴履き替えて」
と、言われるがままに靴を履き替えて昇降口を出ると、末次先輩の自転車がある駐輪場に着いて行った。
「末次先輩、どこ行くんですか?」
「まぁまぁ。お楽しみだよ」
委員会以外で末次先輩と話す機会は無いから少し戸惑いながらも、ゆっくり自転車を押して歩く末次先輩のあとを追った。
また昇降口まで戻ってきた時、サッカー部と鉢合わせになった。
「末次さん」
声を掛けてきたのは沢崎くんだ。
「おー沢崎。あれ?ついに復帰すんのか?」
末次先輩が嬉しそうに沢崎くんの肩を叩いて、先輩の後ろに隠れるように立っていた私と、沢崎くんの視線が交わった。
「復帰っつーか……え、国枝さん?何してんの」
驚いた顔をした沢崎くん。
さっき笑い合っていた女子生徒と、先日の大森くんが後ろからこちらを見ているのが分かった。
「デートしようかなって」
末次先輩が軽くそう言って、沢崎くんが「デート?」と復唱して私を見た。
疑わしい視線を送られているのを感じたけれど、私は何も言えなかった。
「ということで沢崎。今日は国枝さん借りるよ」
「……いや、別に俺に断ることじゃないっすよ。
じゃあ、楽しんで」
沢崎くんは一瞬だけ視線を私に向けてそう言うと、待っているサッカー部の人たちの方へ戻っていった。
末次先輩は楽しそうに「ハハ。ガキだなー」と沢崎くんを見送った。
「ガキ?」
「あー!国枝さんは気にしなくていいよ。じゃあ行こう」
「ハイ…」
