10年後、思い出したくなる物語


「それ、わざと?」



「え?」



何の脈絡もない会話。




「そんなタコみたいに赤くなるもん?」


「はっ?」


いつかと同じようなことを指摘され、思わず背後にあった窓ガラスにうつる自分の姿を確認した。


「ちがっ…」


「見てるこっちまで恥ずかしくなんだけど。…なにこれ」


そう言って私から視線を逸らした沢崎くんの耳がうっすら赤い。


「…さ、沢崎くんも人のこと言えないじゃん」

私は冷やしている反対側の手で自分の頬を冷やした。



「…うるせー」


そう言うと、「あと自分で冷やして」と私の手首を掴んでいた沢崎くんの手が離れた。


脈拍が伝わってしまうんじゃないかとドキドキしていたから少しホッとする。


「アイロン、俺がやる」


「うん…じゃあ、お願いします」


ポツリポツリと会話をするけれど、なんとなくぎこちなく感じるのは、気のせいだろうか。