10年後、思い出したくなる物語




「沢崎くんって、体育祭競技全く出ないの?」

何となく手持ち無沙汰で、そんな事を聞いてみた。

「んー?あぁ。多分ね」

沢崎くんはこっちを見ずに答えた。

なんか、微妙な言い方だな。


「多分?」

「部活対抗に出てほしいって言われてるけど、断る予定」

「えっ、帰宅部じゃなかったの?」

「違うよ。一応所属はサッカー部。幽霊部員だけど」

「そうなの…?勝手に帰宅部だと思ってた」

「まぁ、ほぼほぼ帰宅部と一緒の生活してるからな」


末次先輩から聞いた話では、今はサッカー辞めたって言ってたような…。

でも幽霊部員ってことは、辞めたことに変わりはない??

頭の中が軽くパニックだ。


ひと通り家庭科室の物色が終わったらしい沢崎くんが、私のいる作業台に戻ってきて対面の椅子に座った。



「中学のときは本格的にやってたんだよね?」

私がポロっとそう聞くと、沢崎くんは頰杖をついて私をジッと見て「そうだったかもね」と言って少し笑った。



やけに沢崎くんの視線が痛くて、目を逸らしたまま私はアイロンの温度ランプを見つめた。



「あのさ、





なんで俺が中学でサッカーやってたこと知ってんの?」





その瞬間、“カチッ”とアイロンの温度ランプが点灯する音がした。