入ってすぐ、右側に扉があり、そのまま進むと左側にキッチンがある。
 まな板の上には、カップ麺の空カップやコンビニ弁当の入れ物が置いたままになっていて、彼の食生活がうかがえた。
 キッチンの反対側、右側には洗面所が見え、キッチンの前には小さなローテーブルが置かれている。
 わたしはテーブルの上におせちを置いた。

「そこ、座ってや」
「あ、はい」

 座布団も椅子もなく、床に直に座る。
 奥にはガラス張りの引き戸で仕切られた部屋が一部屋あり、わたしはついついそちらも眺めてしまった。
 1DKの部屋ってところだろうか。

 この部屋には窓がないが、奥の部屋の壁一面が窓になっていて、明るさはある。
 とそこで、奥の部屋の左奥にあるベッドに気付いた。
 なんとなく、気まずい。間に仕切りがあって良かったと思いながら、目をそらした。
 奥の部屋の右側には本棚とクローゼットがあり、本が多い。読書が好きなのかな。

 誠司さんは音を立てて靴を脱ぎ、キッチンで何かごそごそしていた。
 何してるんだろう、と思って見ると、湯呑とマグカップ、割り箸を持った誠司さんがこっちにやって来るところだった。

「悪いな、小さいテーブルしかなくて」

 そう言いながら、湯呑を自分の前に、マグカップをわたしの前に置くと、テーブルの上の灰皿やティッシュ箱を床に置いた。
 お礼を言いながら、マグカップの中身をひと口飲む。日本茶だ。冷えた体が温まり、ホッとする。

「おせち、広げられるか?」
「たぶん大丈夫です」

 二人で食べるつもりだったので、お重と言っても二段しかなく、小さめのものだ。
 二人では二段でも多いかと思って、本当は一段でおさめたかったんだけど、ちょっと作りすぎたんだよね。
 男性の肩幅くらいの直径の丸いローテーブルは確かに狭いけど、なんとかなるだろう。
 早速、風呂敷をほどいて、赤い重箱を取り出した。

 わたしが風呂敷を畳んでる間に、待ちきれないとばかりに誠司さんが重箱のふたを開けた。

「うわ、すげえ! うまそう、見た目もきれいやん」