さらに、信号を3つ渡ってすぐ、グレーのマンションの前で誠司さんは立ち止まった。

「ここやから」

 ポケットから手を出して、マンションを指さす。わたしはそれを見て頷いた。
 わたしのマンションより少し高く、7、8階はありそうだ。マンションの横手から後ろにかけて広い駐車場がある。
  大きな玄関口は道に面してあり、中に入るととても綺麗だった。外観も綺麗で、おそらく新しい建物なんだろう。
 駅からは少し離れているけど、わたしのマンションよりいいマンションな気がする。

 郵便ポストを横目に見ながら、玄関ホールを抜けると、その奥にエレベーターホールがある。
 エレベーターは一機。
 1階に下りていたので、すぐに乗り込むと、ボタンは7階まであり、誠司さんは6階を押した。
 浮遊感をわずかに感じ、しばらくしてから6階に着く。

 エレベーター自体は古いタイプなのか、すぐに目的階につく最新のエレベーターに比べると、ひとつ上るのに時間がかかる。
 そういうところにちょっと安心した。
 オートロックでもないし、綺麗に見えても安めの部屋なのかもしれない。
 比べても仕方ないことだけど、住んでる部屋にあまりにお給料の差を感じると少し悔しくなってしまう。

 6階で降りると、廊下は左右に伸びていて、誠司さんは右の道を行く。
 ついて行こうとすると、彼はすぐに止まった。

「ここや」

 指し示された扉を見る。603号室、そこが彼の部屋だった。
 表札に名前は書かれてないので、苗字はわからないままだ。
 誠司さんは扉を開けて、先にわたしを促した。

「どうぞ」
「おじゃまします」

 中を観察しながら上がりこんだ。