「に、日本酒なんて初めて飲んだから、どれだけ強いかなんて知らなかったの」
「いや、何も割らずに飲むんだから、それなりに強いってのは想像つくやろ」
「だって、カクテルやチューハイしか飲んだことないし」
顔を背けて、「もういいでしょ、別に」と早口でまくし立てると、薬を飲んで、水もお代わりをしてごくごくと一気に飲む。
わたしは年下と付き合っていただけあって、大人っぽい姿よりも子供っぽい姿に弱いのかもしれない。
誠司さんの、黙ってるときの男くさい外見と、時々見せる子供のような表情とのギャップに驚かされる。
鍛えられた大きな体だから精かんな印象だけど、よく見れば、切れ長より丸っこい瞳で、童顔なのかもしれない。
「ああ、そういや、カスミの携帯が何度も鳴ってたで」
「え?」
ドキンとした。
「あ、ありがとう」
教えてもらったお礼を言って、かばんを探す。
胸が早鐘のように動く。
かばんはおせちを食べたテーブルの側で見つかり、携帯を取り出した。
画面が暗いままの携帯を見つめる。
着信履歴を見たくない。
そんな考えが浮かび、そう思ってしまう自分が不思議だった。
このタイミングで何度もとなると、十中八九、昨日別れた健吾からだろう。もし、健吾のアパートを出てすぐに電話をくれていたなら、今頃は仲直りして、元サヤにおさまっていたと思う。
一人になることが苦手なわたしは、一言でも謝ってもらえたら折れてしまう。
健吾のことを好きじゃなかったと気づいても、一人でいることに比べたら、誰かといることを選んでしまうんだ。
でも、どうしてか、今はそんな気になれなかった。
元サヤに戻りたくないと思ってしまっている。だから、電話には気づかなかったふりをしたい。
結局、携帯を開かないまま、かばんに戻した。
「おい、かけなおさんで、ええんか」
声をかけられて初めて、自分の行動を誠司さんに注視されてたと知り、顔をあげた。
「電話の相手、彼氏か親御さんやろ。何も言わんと泊まったから、親御さん心配してるんや――」
「心配してくれる人なんていません」
誠司さんを遮ったわたしの言葉は、自分でもかたい声だと思う。震えないように、わざと低く力の入った声を出した。
「両親も親しい親戚もいません。わたしは一人です」
誠司さんの顔は見れなくて、その後ろを睨みつけるように見ていた。
それでも、彼が息をのんだと気配でわかった。
「いや、何も割らずに飲むんだから、それなりに強いってのは想像つくやろ」
「だって、カクテルやチューハイしか飲んだことないし」
顔を背けて、「もういいでしょ、別に」と早口でまくし立てると、薬を飲んで、水もお代わりをしてごくごくと一気に飲む。
わたしは年下と付き合っていただけあって、大人っぽい姿よりも子供っぽい姿に弱いのかもしれない。
誠司さんの、黙ってるときの男くさい外見と、時々見せる子供のような表情とのギャップに驚かされる。
鍛えられた大きな体だから精かんな印象だけど、よく見れば、切れ長より丸っこい瞳で、童顔なのかもしれない。
「ああ、そういや、カスミの携帯が何度も鳴ってたで」
「え?」
ドキンとした。
「あ、ありがとう」
教えてもらったお礼を言って、かばんを探す。
胸が早鐘のように動く。
かばんはおせちを食べたテーブルの側で見つかり、携帯を取り出した。
画面が暗いままの携帯を見つめる。
着信履歴を見たくない。
そんな考えが浮かび、そう思ってしまう自分が不思議だった。
このタイミングで何度もとなると、十中八九、昨日別れた健吾からだろう。もし、健吾のアパートを出てすぐに電話をくれていたなら、今頃は仲直りして、元サヤにおさまっていたと思う。
一人になることが苦手なわたしは、一言でも謝ってもらえたら折れてしまう。
健吾のことを好きじゃなかったと気づいても、一人でいることに比べたら、誰かといることを選んでしまうんだ。
でも、どうしてか、今はそんな気になれなかった。
元サヤに戻りたくないと思ってしまっている。だから、電話には気づかなかったふりをしたい。
結局、携帯を開かないまま、かばんに戻した。
「おい、かけなおさんで、ええんか」
声をかけられて初めて、自分の行動を誠司さんに注視されてたと知り、顔をあげた。
「電話の相手、彼氏か親御さんやろ。何も言わんと泊まったから、親御さん心配してるんや――」
「心配してくれる人なんていません」
誠司さんを遮ったわたしの言葉は、自分でもかたい声だと思う。震えないように、わざと低く力の入った声を出した。
「両親も親しい親戚もいません。わたしは一人です」
誠司さんの顔は見れなくて、その後ろを睨みつけるように見ていた。
それでも、彼が息をのんだと気配でわかった。