しばらくわたしの様子を見ていた誠司さんもお酒をあおった。

「すごっ……! お酒、好きなんですね」
「ああ、うまいやん。酒はなんでも好きなんやけど、今日は正月やからな、正月らしく日本酒や。カスミの作ってくれたおせちは和食ばっかやから、やっぱ日本酒が一番うまいで」
「そんなもんですか」

 誠司さんがあんまりおいしそうに飲むものだから、勇気を出して、一口ゴクッと飲んでみると、あまりに濃いお酒の味にびっくりした。辛くて、喉が焼けるようだ。
 ビールの苦みもまずいと思ったけど、日本酒はもっと嫌いかもしれない。

 お酒の味をごまかすために、急いで甘い卵焼きを口に放り込んだ。ひと噛みすると、すぐに嫌な味が甘さで和らぎ、ホッとした。
 誠司さんと一緒においしく飲めないのは申し訳ないけど、こればかりは仕方ないよね。
 わたしは小さく息をつくと、早くグラスを空にするために、息をとめて、残りを一気に飲んだ。


 次に気付いたのは、頭の痛さだった。ズキズキと締め付けるような痛みを感じる。
 枕の位置が悪いのかと、ごそごそ動いてみるけど、頭を動かせば強く痛み、とても寝苦しかった。
 息を吐くと、その匂いがすごく臭いことに気づく。
 にんにくとは違うこの匂いは、何?

 それに、どうしてこんなに頭が痛いの。
 頭痛もちではないので、その痛みに違和感を感じる。
 痛みでこれ以上寝ることは無理なんだから、起きて薬を飲んだほうがいいと思うのに、目がすごく重くて、まぶたは開かない。

 眠い。
 寝たい。
 でも、痛いし臭いしで寝られない。

 さっきからその堂々めぐりだ。動くと痛いのに、ひょっとしたら頭と枕の位置で治まるかもしれないという望みは捨てきれなくて、ゴロンと寝がえりをうった。そのとき、手が何かに当たった。

「イテッ」
「え?」

 どこかから聞こえた声に驚き、あんなに重たかったはずのまぶたが開いた。