「彼氏、大学生か?」
「はい」
「そうか。遊びたい盛りやしな。彼女がおせち作ったら、ひくんかなぁ」

 誠司さんはまた卵焼きを食べながら、首を傾げた。

「俺みたいに32歳にもなった男なら、逆にうれしいんやけどな。一人暮らしが長いから、家庭的な料理も食べる機会少ないねん」
「そっか。じゃあ、今度は誠司さんみたいな彼氏を作ります」

 顔をあげて、今度はきちんと笑った。

「なんやしんみりしたし、酒でも飲んでええか。おせちって言えばやっぱ酒やしな」
「うん、もちろん」
「おっしゃあ!」

 誠司さんは嬉しそうに片膝を打つと、立ち上がってキッチンへ消えた。
 すぐに戻ってきたその左手にはグラスが二つ、右手には一升瓶が握られてる。瓶をテーブルにドンと置くさまを、目を見開いて見た。

 てっきり缶のビールかチューハイをもってくると思っていた。酒ってそのまま日本酒のこと?
 誠司さんは重そうな瓶を片手で器用に傾けて、グラスに注いだ。

「はい」
「へ?」

 透明な液体が並々に入ったグラスを差し出された。
 それが何を意味するのかわかり、すぐさま首と手を大きく横に振る。

「わたし、日本酒なんて飲めないよ」

 お正月のお屠蘇が大嫌いなせいもあってか、日本酒を飲んでみようなんて思ったことすらなかった。
 普段飲むのはチューハイやカクテル、それも甘くてジュースみたいなやつだ。アルコールの味がすると、顔をしかめてしまうほど苦手なんだ。

「まあ、まあ。そう言わんと、一杯だけでも付き合ってや」

 グラスを手に押しつけられ、中身がこぼれそうになったものだから、咄嗟に受け取ってしまう。
 そのグラスと誠司さんの顔を交互に見る。
 にっこり笑った誠司さんに負けて、仕方なく飲むことにした。

 とはいえ、ゴクリとなんて飲めないから、ちびりちびりと舐めるように口に含んだ。
 舌に広がる辛さに顔をしかめる。もう一度舐めるけど、やっぱり同じ。