「なぁ。京都と言えば、人力車じゃない?」


救世主が現れた。


「え?人力車?」


瀬戸くんが眉を上げる。


「竹林の中を走るんだぜ。ここじゃなきゃ見られない景色だから」


「あぁ、人力車は思い付かなかったなぁ」


そう言って、瀬戸くんは自分で作った冊子を見ている。


「うん、まぁ。別に時間ないわけじゃないし、乗るか、人力車!」


冊子を閉じた瀬戸くんが意気揚々と言うと、桜庭さんは目を輝かせて手を上げた。


「はーい!はいはいはい!じゃ、私黒崎くんと......」


桜庭さんが言いかけたところで、私は黒崎くんから腕を引っ張られた。


「おまえはこっち!」


「ちょ、え!?」


きっと、桜庭さんは黒崎くんと乗りたかったに違いない。


それなのに、黒崎くんは私の腕を掴んで人力車の方に歩いている。


彼女への恐怖心で黒崎くんに腕を引かれながら振り返ると、彼女の目から炎があがっており、私は息を飲んで前を向いた。