「お二人さぁん!そんなとこで立ち止まってないで早く行こうぜ」


瀬戸くんに手招きされ、私は目を泳がせながら瀬戸くんの元に小走りする。


私のすぐ横に来たのは桜庭さんだった。


誰にも気づかれないように舌打ちをして、私の足を踏みつけてきた。


痛みで『う......っ』とうなり声をあげると、声を出したら殺すよと脅されているような私を見ている。


私は足を押さえようとした手を元に戻し、行き場を失った手で意味もなくスカートを整えた。


私たちはその後も、アイスを食べたり、あまり荷物にならない程度の小さなお土産を買ったり、たくさんのお菓子を試食したりと、色々なお店をまわった。


そして、私が嵐山でしたかったこと。

人力車......。


本を見てから乗りたいなと思っていたけれど、自分から言うわけにはいかないし。


ほとんど瀬戸くんが作ってくれた班の冊子を見ても、一日のスケジュールの中に人力車に乗ることは書かれていなかった。


はぁ......。

人力車は諦めるべきだな......。


深いため息と共に諦めかけた、その時。