「念願の嵐山だな」


突然耳元で囁かれ、ゾゾゾと鳥肌が立った。

と同時に、私は耳を押さえて辺りを見渡した。


すぐに目に入ったのは、瀬戸くんの横で炎を上げながら私を見ている桜庭さん。


「ちょ......突然やめてよ!それに、私が本を買ったことは絶対誰にも言わないでよ!」


私は誰を見ることもせず、ただ砂利道に視線を落とした。


「別に言ったりはしないよ。だけどあん時、古川がどこをチェックしたのかは、だいたい分かるよ」


「何を見てたか見てたの!? 本当ストーカー!!」


「人聞きの悪いこと言うなよ。見てたんじゃなくて、古川ならここかなって見当がついてるだけ」


俺ってスゴいだろと付け加えて、おどけて笑う。


憎めないその笑顔......。

悔しいけど、好きなんだよ......。