行ってみたいところはいくつかピックアップした。


あの本を持っていくわけにはいかないから、小さな紙にメモしてスカートのポケットに忍び込ませる。


グループ行動だから思い通りにはいかないかもしれないけれど、準備しとくだけ無駄じゃないもんね。


私が自ら、ここに行こう、あそこに行こうと言えるようになるには、あと数年必要だと思う。


修学旅行当日。


学校から貸しきりバスで空港まで向かい、飛行機で京都までひとっとび。


その飛行機の席が自由ならよかったのに、そういうわけにもいかない。


私の横には桜庭さんが座り、その後ろに黒崎くんと瀬戸くん。


友達との旅行にテンションが上がるクラスメイト達は、私たちの席にだけ立ち込める黒いモヤモヤに気がつかないだろう。


会話なんて、一切なし。


飛行機のエンジン音と、みんなの騒がしい小声で、隣の彼女の息さえ聞こえない。


私はこの居心地の悪さに、ずっと窓の外の、自分より低い位置にある白い雲を見ていた。