京都は、本当によくわからない。


さっきの班決めの時には興味のないふりをしたけど......。

少しは、楽しんでもいいよね?

それを表に出しさえしなければ、私だって楽しむ権利、あるよね?


私は学校帰りに本屋に立ち寄った。


もちろん、京都の旅行本を買うために。


興味のないふりはしたけど、みんなに頼りっきりなのはお荷物になるから。


少しくらい知識をつけていたほうが、一緒に行動する側としたら、楽だよね?


「嵐山、かぁ......」


旅行ガイドの本が並べられているコーナーに行き、立ち読みをする。


出来るだけ写真が多くのっていて、一番分かりやすいものがいいから。


「あ。人力車もある」


へぇ。人力車かぁ。

乗ったことないなぁ。


京都の街を人力車で走るってどんな感じなんだろう。

隣には、黒崎くんが乗っていて......。


「へぇ。なぁんだ。興味無さそうにしといてガッツリあるんじゃん」


「ぎゃぁぁぁ!」


想像していたものが想像していたものだけに、背後から突然かかった声に大声を出してしまった。


当然、静かな本屋に響き渡り、多くの人の冷ややかな視線がささる。


く、黒崎!

なんで黒崎くんがこんなところにいるのよ!


私は勢いよく閉じた京都の旅行本を胸の位置で抱え、荒立った呼吸と共に彼を振り返った。


彼の視線は私が抱えている本に向いていて、私は慌ててその本を積み重ねられていた本の上に置く。


そして、曖昧に笑ってみせた。


「ダメじゃん。本屋で大声出したら」


見てみろ。まだみんな見てんじゃん。彼が顎で周りを指しながら言う。


ダメじゃん......って。

あなたが突然声をかけてきたりするからでしょうが。


あぁ、心臓に悪い。


私はとにかく呼吸を整えようと、目を閉じて深呼吸をした。