「俺、古川に最初会ったとき言ったよね。古川のこと知ってるって」
そうだ。
転校初日、廊下でたまたま会った黒崎くんに言われたんだっけ。
「母さんから聞いてたから。古川が引っ越して来るって。あん時、ここで一緒にホタルを見たのも喜美子さんとその娘。古川だって知ってた」
私を見て微笑む彼の顔は、なんて優しさに溢れているんだろう。
薄暗い中でも目立つ金髪。
最初、外見だけで彼の性格を判断していた自分が醜くて恥ずかしい。
そうじゃないのに。
黒崎くんの心は誰よりも澄んでいて美しいって、そう思った。
やっぱり......好き。
言ってはいけないことだけれど、秘めていれば誰にもわからない。
隠れて好きでいよう。
それだけでも幸せだから。
「あ......」
黒崎くんが私の頭をみる。
「ホタル。古川の髪にホタルがついてる。キレイだ」
少しだけ掠れる彼の声にドキリとする。
ホタルが逃げないための小声だってわかっているのに、とても魅力を感じてしまうんだ。
「あ......。黒崎くんの髪にも」
キラキラと金髪が光った。
キレイだ。
「改めて、久しぶり。そして、ごめんな」
「私こそごめん。ひどいこと言ったよね。自分のことしか見えていなくて.....」
俯くと、彼がフッと笑った。
「いいよ。まぁ、お互い様ってことで」
そう言って、空を見上げる。
私もつられて見上げると、そこには幻想的な景色が広がっていた。
曇っているはずの空に、ホタルの光のおかげで満天の星空と化していたんだ。
飛び回る無数のホタルが、流れ星のように見える。
ホタルを追いながら横を見ると、不意に黒崎くんと目が合い、また心臓が跳ねる。
好きです。黒崎くん。
私のことを覚えていてくれて、ありがとう。