豊田さんは、いつも通りお茶をいれてくれた。
「あ、そうそう。これ見て」
豊田さんが持ってきたのは、古びたアルバム。
「この前見ていたら、喜美子さんの学生の頃の写真があってね。今度聖菜ちゃんが来たら見せてあげようと思ったんだ」
そういって、豊田さんがそのページをめくった。
喜美子とは、お母さんの名前だ。
白黒の写真。
お母さんの中学生の頃の写真だろう。
若いお母さんは、おさげがみでセーラー服を着て笑っていた。
その隣には、黒崎くんのお母さん。
二人とも、今よりも若いだけで全然変わっていなかった。
「初めてみました。お母さんの若い頃」
「聖菜ちゃんの家にもあるでしょう? お母さんの写真」
「あるんですけど、ちゃんと見たことはなくて。それに、学生の頃の写真は初めてです」
今の私とあまり変わらない年のお母さんは、この時どんな学校生活を送っていたのだろう。
私みたいに学校に行けなくなったりしてたのだろうか。
お母さんには、黒崎くんのお母さんがいたからまだ心の支えになったんだろうな。