と......。豊田さんの家ではそう思った。思っていたのに、自分の家に帰ると気持ちがまた振り出しに戻るんだ。
行こう思ったのに......。
だけど、行ったところで、私の気持ちは変わらない。
またキレイな風景を見たいという気持ちはあるけれど、ただ見たいだけ。
今見たとしても、幸せな気分にはならないだろう。
土曜日。自然と足が向かっていたのはやっぱり豊田さんの家だった。
なんだか気分が沈んだ時には、何かに呼ばれるような気がした。
それは多分、豊田さんの優しさが私をそうさせているんだろう。
「あれ? 今日はホタルを見に行くんじゃなかった?」
曖昧に笑うと、豊田さんは農作業の道具を玄関脇に置いて、中に入りなさいと言った。
5時過ぎ。
日が長くなって、夜がくるまでには時間がある。
行きたいのか行きたくないのか。
もうわけがわからない。
判断出来ない自分が腹立たしかった。