「聖菜ちゃんも何があったのかは知らないけど、わたしでよかったらなんでも相談にのるよ。お父さんに言いづらいことでもなんでも」


私は微笑む。


「達也のことで悩んでいるのであれば、私が達也をしつけるから」


「い、いえ!そんな!黒崎くんは関係ない、です」


嘘まるみえ。

豊田さんの表情でそれはわかるのに、他に言い訳がみつからなくて俯いた。


年の離れている豊田さんが相談相手というのは失礼なことだろうか。


学校にも、お父さんにも言えないことでも、豊田さんには言えそうな気がするのだけれど。


「聖菜ちゃん。来週、ホタルが見れると思うよ」


ホタル......。

豊田さん......突然何を。


「気温や湿度も大切だけど、雨上がりの午後7時頃川辺に行ってみてごらん。キレイだから」


雨上がりの午後7時以降...。


「天気予報では、土曜日あたりがよさそうだけどね」


「........」


「ホタルでも見て、心を落ち着かせみてごらん。今までみえなかったものが見えるようになるから」


豊田さんが微笑む。


ホタル、か。

豊田さんの言うとおり、心を落ち着かせたら何か見えてくるかな。


色んなことの解決方法が、見つかるかな......。


清掃した川辺に行ってみよう。


あの頃約束した女の子が彼女だったことがショックだけれど、またあの美しい光が見てみたい。