「そんでさ、おまえなんかあった?」
ドクンっと心臓が濁った動きをする。
「ど、どうして?」
「いや、キラがなんかお前が変だったって言ってたから」
瀬戸くんが......。
「誰かになんかされて学校来れんくなったのか?」
「ま、まさか。そんなんじゃないよ」
また嘘をつく。
「ただの頭痛。すぐによくなるよ」
嘘を隠すために、不自然にならないようにわらってみせる。
だけど私は器用じゃない。
作った笑顔なんてすぐに崩れてしまう。
黒崎くんに気づかれる前に、ドアを閉めなくちゃ。
「わざわざ来てくれてありがとう。また学校でね。じゃ」
せっかくお見舞いにきてくれた人に冷たい態度だってわかってる。
だけど、こうでもしないと泣いてしまいそうで......。
閉めようとしたドアが彼のつま先でひっかかり閉まらない。
「なんか隠してるだろ」
目を見開く。
「か、隠してなんかないよ」
「俺の目を見ろ。おまえ嘘つくとき、目を反らすだろ」
「………」
「何があったんだよ」
「黒崎くんには関係ないでしょ?何にも知らないくせにでしゃばらないで!」
叫んでから後悔した。
なんてことを言ってしまったんだろう。
後悔先に立たずだ。
彼は失望した表情をしている。
「そうかよ。悪かったなでしゃばって。もうなにもしないから。じゃあな」