「開けてって言ったのになんで開けてくんねぇんだよ」
軽く頬を膨らませた黒崎くん。
「まぁ、いきなり押し寄せたら誰だってビビるか」
そう言って私に差し出したのは、コンビニの袋。
中を覗くと、さっき私が見ていたファッション雑誌やお菓子、ジュースなどがはいっていた。
「……これ」
「ずっと家にいるのは暇だろ?女が読む雑誌はよくわからないからとりあえずそれにしてみた。持ってたらごめん」
持っていても持っているとは言えない。
彼の優しさだから。
「あ、ありがと」
答えながら胸がジワリと暖かくなる。
と同時に締め付けられた。
やっぱり、好きかも。
捨てようと思っていた気持ちなのに。
こんなタイミングで現れるんだもん。
捨てられないよ。
「調子はどう?」
「まだ少し頭が痛い、かな」
また下手な嘘。
さっき鏡に映った姿なら、本当に風邪のように見えるかもしれないけれど。
「無理はするなよ。学校は、楽になってから来ればいいし
」
「心配してくれて、ありがとう」
お礼を言った瞬間、彼女の言葉が頭をよぎった。
ただみんなに優しいたけ。
そう、か。
そうだよね?
彼は、可愛そうな人を見捨てられないだけ。
私だってその中のひとり。
特別じゃないのに。
私って本当にバカ。