日曜日当日、少し緊張して駅に向かった。
時間はまだ早い。
だけど、足の速度は上がっていくばかりだ。
ベージュの、しかも無地の地味なワンピースの裾が前から軽やかに吹く風になびく。
デートだと気分の上がる一方、もちろん不安もある。
誰かに見られたらどうしよう。
そう、不安に思うのに、断れなかった私は矛盾している。
約束の時間より15分も早く到着してしまい、期待と後悔とが入り混じる。
〝デート〟。喜んでいいのかもわからない。
彼はただ、私と出かけることを〝デート〟と言っただけ。
深い意味はない...。
「早かったな」
駅前で悶々と考えていると背後から声がかかりおもいっきり振り返った。
目を丸くすると、彼が苦笑する。
「なんだよ。なんだか俺、不審者みてぇじゃん」
彼に言われて、慌ててそうじゃないと否定するも、説得力はなかったらしい。
彼は、スポーツブランドのグレーのズボンに、同じブランドの白いTシャツだった。
ラフな格好。デートだというのに、普段着すぎる。
まぁ、私も色気のないベージュのワンピースなのだけど。
「似合ってるじゃん」
予想もしていなかった言葉に鼓動が高鳴った。
「シンプルなの、古川らしくていい」
彼が笑った。
太陽の光を背にまとってとてもキラキラと輝きながら。
やっぱり、彼はいつも明るい。
太陽までもが、それを演出してくれるのだから。
私には絶対にできないこと。