「わ、私とデートしたって何にも楽しくないよ?」
緊張と焦りで速くなる鼓動に合わせて早口になる。
彼は窓際の本棚に寄り掛かって座っていた。
窓から差し込む日差しに絨毯から舞い上がったホコリが光って見えて、やっぱり彼の周りはとても明るく、神秘的だった。
「楽しいよ」
彼が笑った。
「楽しい」
2度言って、また笑う。
「俺が古川さんとデートしたいんだ。楽しいに決まってる」
この人は何を根拠にそんなことを言っているんだろう。
私とデートして楽しい?
そんなわけ......。
「日曜日、10時に駅前な」
ただ、駅前といって持ち合わせ場所になるのも、田舎ならではなのかな。
普通ならどの駅なのかとなるものだと思うけど。
私が思い当たる駅前は、ここではひとつしかない。
私はコクコクと頷き、ポカンと口を開ける。