清掃作業当日。
清掃場所の川辺の場所がはっきりわからない私を、瀬戸くんが学校まで迎えに来てくれると言った。
本当は現地集合。ここは黒崎くんが来るべきなのではと思うけど、思うんだけど、どうしてそう思う?
無視して関わりたくない相手だと思っているのに、ラインの画面に連絡がこないかと待っている自分がいたり。
私が持ってはいけない感情が、また芽生えつつある?
いや、そんなはずない。
あれだけ痛い目をみたのに、それに懲りないほど、私はバカじゃない。
外見とは正反対の彼の言動に、ただ翻弄されているだけ。
騙されるな。誰も信用するな。
気持ちをしっかり持とうとグッと体に力を入れて空を見上げた。
新しい紺色のジャージの襟元にはまだはりがあり、少し見上げ辛い。
4月も中旬に近づき、春真っ只中の水色の空はとても天気がよく、だけど暑すぎず風が心地よかった。いい掃除日和になりそうだ。
掃除に集中していれば、何事もなく1日を終わらせられるだろう。
「ごめんごめんお待たせ!」
目を閉じで深呼吸をしたその時、瀬戸くんが校門から手を振りながら走って来た。
紺色のジャージの上下に、肩にはスクールバックを下げている。
私は軽く頭を下げて瀬戸くんに答える。
「んじゃ、行こうか」
相変わらずチャラい笑顔。
人懐っこい性格は、きっと多くの女の子を勘違いさせてきたんじゃないかなって思う。
私の苦手とするタイプだ。
「掃除、本当は面倒臭かったんじゃない?」
「全然。実は結構楽しみにしてた」
だけど、彼のいいところは緊張せずになぜだか安心して話ができるところ。
黒崎くんとは全く違う。
理由はわからないけれど……。